《2024.1.9-11》
ブラショフからシギショアラへ
ブラショフを離れ、世界遺産の町シギショアラへと向かっていきます。
移動手段は、おなじみのルーマニア鉄道です。
こちらブラショフの駅。
列車は、鈍行の自由席で格安のRという種類のチケットを購入しました。
4時間の乗車で、24レイ(760円くらい)と格安です。
格安だからと言って汚いのかというとそんなことはありません。
ただ、この列車の車内では少々悲しいことがありました。
乗客の中の10人ほどのグループが、こちらを見ながら「チンチョンチャン!!」とはやし立て、からかってきたのです。
日本国内ではまず聞くことのないこの「チンチョンチャン」という言葉は、東アジア人をからかう差別用語。
実はこのようなことはこれまでも何度もありました。
“あぁ、またか…”と思い、特にかまうことなく無視。
しかし、彼らは大変しつこく、何度も「チンチョン!」と声を張り上げ、ゲラゲラと大笑いを繰り返してきます。
あまりにしつこいので彼らに目を向けると、その容姿が目に留まりました。
ボロボロで汚れた衣服に、何日も洗ってなさそうな髪の毛。
とても余裕のある暮らしをしているようには見えません。
彼らは、街で見る大多数のルーマニア人とは違い、濃くて真っ黒な髪の毛に浅黒い肌をしています。
“ロマの人たちだろうか…?”
そんなことが咄嗟に頭に浮かびました。
ロマとはインドを起源とする民族で、長い歴史の中で世界各地を放浪し、時に迫害を受けてきた民族とされています。
ルーマニアは世界の中でも特にロマの人たちが多く住んでいる国だそうですが、国内での差別や偏見が根深いため、差別を恐れて出自を隠す人も多く、正確な人数は分からないそうです。
実際私を馬鹿にしてきた一団がロマなのかどうかは定かではないけれど、もしそうなら彼らは人一倍差別される側の気持ちは分かるはずではないのか?
それなのに、なぜこんなことをするのか?
教養の無さからか?
自分達が受けた差別への仕返しか?
それとも、他者を下に見ることで、自分達の尊厳を保とうとしているのか?
こうやって差別は連鎖していくのか・・・?
馬鹿にしてくる彼らの顔を無表情で見つめながら、そんなことがぐるぐると頭を巡りました。
まぁ実際のところは、滅多に見ることのないアジア人が突然目の前に現れたので、ただ物珍しさで馬鹿にしたというだけの話だと思います。
そして、彼らがロマかどうかに焦点を置いている私の思考もまた、差別といえば差別なのかもしれません。
彼らはしばらくするとこちらに興味を無くしたようでしたが、最後まで周りを気にせず大声で騒ぎたてながら列車を降りていきました。
心がぐったりと疲れてしまい、意気消沈です。
・・・・・・
そんなことがありながらも、列車は無事にほぼ定刻通りシギショアラの駅に到着。
シギショアラの駅から旧市街地へは高低差があるためかなりの階段を上らねばならず、キャリーバックを持っての移動はまるで体力トレーニングでした。
そうして辿り着いた宿のある旧市街には、なぜか人っ子一人いませんでした。
時刻はまだ夜7時台。決して深夜ではありません。
クリスマスツリーだけが煌々と輝いていますが、こんなに誰もいない夜の広場で光り輝き続けるのは電気代が不経済な気すらします。
ましてやクリスマスはもう随分前に終わっていますし…。
誰もいない夜の旧市街は若干不気味ではありますが、その古い中世の街並みにはとても趣があります。
街歩きをするのが楽しみです。
シギショアラの宿
シギショアラで宿泊したのは、旧市街のど真ん中にあるBrug Hostel Sighisoara。
他の旧市街の建物同様、このホステルも中世に建てられた建物を改装しているようです。
部屋はこんな感じ。
“写真の撮り方下手すぎだろ”と思うかもしれませんが、部屋のど真ん中に梁があるのでどうにも避けることが出来なかったのです。
4人部屋でしたが、真冬の閑散期の為か、部屋は貸し切りでした。
というか、2泊の滞在中、他の宿泊者には一切会うことがありませんでした。
もしかしたら建物自体私の貸し切り状態だったのかもしれません。
歴史ある建物に夜一人きりというのははっきり言って少々背筋が寒くなる雰囲気があります。
床のきしむ音やドアの閉まる音など自分の出す一音ごとにビビり散らかしていましたが、施設は清掃も行き届いていて快適。
部屋にトイレとシャワーついてるし、私一人の為にしっかり暖房もつけてくれたので非常に暖かく過ごすことが出来ました。
洗濯物もよく乾いてありがたや。
ヨーロッパの小さな町(特に世界遺産の町)は宿泊費がべらぼうに高いイメージがありますが、このホステルは1泊2300円程と値段もお手頃だったので大変おすすめです。※季節によって値段は変動するとは思いますが。
シギショアラ街歩き
おはようございますにゃん。
1月のシギショアラは朝晩氷点下まで冷え込む寒さ。
猫も、しっぽをぺったり体に巻き付け、一点を見つめながら寒さと戦っています。
寒さは身に堪えますが、早速、世界遺産のシギショアラ旧市街を散策していきたいと思います。
なんとも美しい街並みです。
その中でも一際目を引くのは、街を見下ろす大きな時計塔。
これは14世紀に建造され、17世紀に再建されたものだそうです。
驚くべきことに、17世紀に作られたからくり仕掛けは今でも現役で機能しているのだとか。
“それは、ぜひにも見てみたい!”と思い、長い針が12を差す少し前から時計を見守りましたが、30分以上経っても一向にからくりは動き出す気配を見せませんでした。
そもそも、この時計の時間は大いにずれています。
元々何時に動くことになっているのかは全くもって不明。
その後もこの時計塔の前を通るたびに何度となく動き出すのを待ちましたが、結局動くところは一度も見られませんでした。
時計台のすぐ近くには、ドラキュラのモデルとして有名なヴラド三世の生家があります。
彼は1431年にこの建物の3階で生まれたのだそうです。
現在この建物はレストランになっていて、トマトソースやらジャムやら“血を連想させる赤いもの”がふんだんに使われたお料理が、かなり強気なお値段で提供されているそうです。
ショップではドラキュラグッズ絶賛販売中。
人の生き血を吸ったことも無ければニンニクを怖がった覚えも無いのに、後の世でこんなに有名になるとはヴラド三世本人も驚きでしょう。
↓ヴラド三世とドラキュラ伝説については、こちらの記事も参照
ちなみに、一昔前にはこのシギショアラ近郊に“ドラキュラテーマパーク”なるものを作る計画が上がったものの、町の人の反対によって頓挫したそうです。
実現しなくて本当に良かったなと思います。
シギショアラの旧市街は、ドイツ人(ザクセン人)によって12世紀に作られた町だそうで、13世紀のモンゴル来襲の後には、その教訓を受けて見張り塔や城塞が築かれたそうです。
今でもそれらの城塞や塔は健在です。
それぞれの塔はかつて“ギルド”と言われる職人組合によって管理されていたそうです。
上の写真の左は肉屋の塔、右側は毛皮職人の塔。
こちらは靴屋の塔。
そうやって色々な職種の組合がそれぞれの塔を管理しながら町を見張り、守っていたのですね。
それにしても、この町では本当に人の姿を見かけません。
冬だから?
中世の街並みも相まって、自分がどこか非現実の世界に迷い込んでしまったかのような錯覚にかられます。
ロマンチックなような、若干怖いような。
高台から見下ろしたシギショアラの町。
旧市街を囲むように町が広がっており、旧市街の外には車も沢山走っているしスーパーなどもあります。
観光客の訪れる旧市街とその周辺は、半日もあれば見終わってしまう規模。
1泊か、下手したら日帰りでも観光は可能な感じです。
私は2泊したので、正直少々時間を持て余す感じではありましたが、その分路地の隅々まで中世の街並みを堪能することが出来ました。
ルーマニアに入ってからというものほとんどまともな外食をしていなかったので、夜はレストランでルーマニア料理を食べてみたりもしました。
こちらは、“サルマーレ”というルーマニア風のロールキャベツ。
中に挽肉と米が入っています。
キャベツは酸味が効いていて、今までに食べたことのないお味で大変美味でした。
添えられている黄色い物体は、ルーマニアの定番主食ママリガです。
トウモロコシのでんぷんを炊いたもので、ルーマニアの女性はこれを作れないとお嫁に行けないといわれるほどの国民食的な存在なんだそうです。
ざらざらしたういろうみたいな食感に妙にはまってしまい、このあとも見つけるたびに食しました。
真ん中に突き刺さっている唐辛子も伝統スタイルなのかどうかは不明。
お値段は42レイ(約1350円)でした。
このレストランが少し洒落た店だったということもありますが、ヨーロッパの中でも比較的物価が安いといわれているルーマニアの物価は、円安の影響か、そこまで安くは感じません。
外食に関しては、日本と同じくらいかなぁという感じ。
レストランで酒まで飲んだ日には破産してしまうので、ビールはスーパーで買って宿で飲みます。
1缶150円程でロング缶が買えるのはありがたい限り!
このURSUS(ウルズス)というルーマニアのビールは、売り上げの一部が野生の熊の保護に使われているんだそうです。
若干黒ビールっぽい香りの上品なお味で大変美味。熊にも良いことした気分で大満足です。
そんな感じで、静かにのんびりと過ごしたシギショアラ。
小さい町ではありますが、その雰囲気が大変気に入り、ルーマニアの中でも一番思い出に残る場所になりました。
次回はシビウという街へと移動していきます。
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